さよならタマちゃん
最近はもっぱら漫画を読む機会も減ってしまったんですが、これは面白かったです。「面白い」っていうのもなんか変なんですが…35歳で精巣腫瘍(ガン)になって、闘病生活から退院してこのマンガをかくにいたったまでの作家さんの実話になってます。
内容は…上記のとおりなので、面白いかといえばまったくも面白くもなんともない内容ですし、逆に辛い闘病のことや荒んで奥さんやまわりにあたったり、そんな自分を後悔したりするような話だけでいえばなんとも悲惨な内容なのですけども…
(これも病院の待合いで読んだけど、とても面白かった)
ADHDとかもそうですけど、いわゆる健常者と呼ばれる人間がなにかの感想をいうのってすごく難しい。何を言っても虚しいだけじゃなかろうかって思っちゃうんですね…それでも強く刺さるものはありますし、読んでいて素直に面白いと感じます。面白いというよりは引き込まれるっていうんでしょうか…あてはまるようないいことばがないです;
さよならタマちゃんは、基本は二つの話がメインで動いていて、ガン治療の話と、アシスタントから漫画家になりたいっていう夢の話で、間をキーパーソンの奥さんがもっている感じでした。
年齢的にも身につまされることが多いというか、実際旦那方の家族も40近くでガンになってたりするのでそこまで他人事として読める感じではなかったです。
ただ、すごく救いのある終り方になってるのでさよならタマちゃんはおすすめです。
最近読んだ中でもうひとつ浮かぶのが吾妻先生のアル中病棟なのですが、最近はどうも創作よりノンフィクションに惹かれる自分がいるなと思います。失踪日記のほうも読みましたが、あー天才ってほんとにいるんだなと吾妻先生のマンガみてるとしみじみ感じます。天才って表現は安易で嫌いなんですけど、この抜群の吸引力ってそれしかないよなあ…っていう。
さよならタマちゃん、アル中病棟の二作ってすごく表現の方向性が似ているなーとおもいますが「入院」っていう舞台がもつ独特の特徴なのかも。
自分が知らないことを学んだり、誤解を解くようなノンフィクション作品のもつ力って本当にすごいなと思います。しかし酒飲むたびに脳内でアル中病棟がチラつくのは勘弁して欲しい…(笑)
「俺にはこの曲の何がいいかがわからない、でも一度聞いたらずっと脳みそでその曲がとまんないんだよー!!」っていう歌みたいな感じが一番しっくり来る吾妻先生のマンガです。